遺品整理について思うこと

豊島の住民549名は93年、処理業者と排出事業者21社、香川県などを相手どって廃棄物の撤去と損害賠償を求め、公害等調整委員会に調停を申請した。
そこで公害等調整委員会は、3名の専門委員を任命し、汚染実態の調査と評価、廃棄物処理方法の技術的検討を行うこととなる。廃棄物汚染実態調査(94年秋〜95年夏)のあらましだけを紹介したい。

調査は、投棄された廃棄物の実態や、それが周辺の環境に及ぼす影響を中心に行われた。約300ヘクタールの対象地を50mメッシュに区切り、交点(36地点)をボーリングや掘削して廃棄物・土壌・地下水などを採取し、有害物質の濃度や溶出量を調べた。
周辺海域の水や底質、生物(カキ)なども同じように分析した。地下水の流れをつかむため、54地点の水位観測や透水試験も行った。
結果は以下のとおり。そのほか製紙汚泥(製紙工場の排水処理から発生する汚泥)、鉱滓(鉱石から有用金属を回収したのちの残りかす)、燃えがらなど多岐にわたる。
量は体積で約46万u、湿重量(水分を含んだ状態での重量)で50万トンもあった(調査前は約28万トンと推定されていた)。一項目以上が基準値を超す廃棄物(有害廃棄物)は40万u、44万トンあった。
地下水と地下土壌もかなり汚染され、有害廃棄物と合わせて約60万トンにも及ぶ汚染物があると判明した。汚染された地下水は、北海岸の下部を通じて海域に漏出していると推察された。

原状回復への対策実態調査を受けた公害等調整委員会は、廃棄物処理の技術面を検討するとともに、申請人(住民)と県(香川県)の調停に務めた。調停作業は難航をきわめたが、97年7月、国が財政援助を申し出たほか、島外に第2の豊島をつくるのは忍びないと考える住民側の譲歩もあって、中間合意に至った。
中間合意のもと、廃棄物処理施設の整備と、地下水などの汚染防止対策を検討するため、学識経験者からなる技術検討委員会ができ、原状回復の具体的な方策を考えることとなった。検討の途上、処理施設を隣の直島につくることが決まり、香川県知事も地元住民に謝罪する方針を示したから、2000年6月6日(36回目の調停期日)に最終合意が成立した団。
このように法手続きの和解は成立しても、原状回復に向けた施設整備はさらに3年以上を要した。そして2003年9月、直島にできた溶融炉で廃棄物の本格処理が始まった。
廃棄物をすっかり10年以上の時間と500億円以上の経費がかかるという。豊島にはいまも多量の有害廃棄物が残るし、全国でも産廃の処理・処分がむずかしくなってきたため、このままではいずれ産廃の行き先がなくなりかねない。
社会全体で産廃問題を根本的に見直す必要があろう。そうした目で、豊島事件が提起した問題を眺めてみたい。
大問題を起こした直接の原囚は行政(県)の対応のまずさだったが、産廃行政の制度的な不備もあった。つまり当時の法制度には、処理業者の許可、搬入廃棄物の監視、地域住民の意見反映、操業停止措置の手続き、原状回復などの面で、産廃の不法処理・処分を防止する充分な機能が備わっていなかったといえよう。
以後の法改正で一部は改善されたにしても、まだまだ不十分だという声も高い。とりわけ、事業者責任が明確化されていない。
私もまったく同感である。豊島に廃棄物を運び込んだのは、たとえばシュレッダーダストなら廃自動車や廃家電の解体業者だけれど、事業者責任の面では、自動車メーカーや家電メーカーにも責任がある。
産廃による環境負荷を生むのが大量生産・消費・廃棄の社会システムであるから、環境負荷発生の責任を生産者側にも押し付けてはいけない。産業製品の処理にも責任を持ち、製品のアセスメントをして環境負荷の低減やリサイクル体制の整備をする。
そんな制度が必要だと思う。また、廃棄物の不適正な処理が長引けば大きなツケが残ることを、豊島事件は教えてくれた。

つまり、産廃の不法投棄を減らし、処理をうまく行うには、未然防止と、初期の適切な対応が欠かせないのだ。いずれにせよ豊島事件は、産廃を適正処理することの必要性をいまさらながら教えるとともに、産廃の社会的背景(利潤優先の経済システム、豊かさのツケ、過疎地へのしわ寄せなど)を根本的に見直させるものだったといえよう。
ごみ問題を解決するにはReduce(リデュース、発生抑制)、Reuse(リユース、再使用)、Recycle(リサイクル)の3Rが大切だと唱える人が多い。しかし私は、リサイクルを除く2R(Reduce、Reuse)こそが肝心だと主張したい。
なぜなのか?むろんリサイクルが不要だとは言わない。けれども、ごみ問題や環境問題を根元から解決するには、リサイクルを云々する前に、とにかく発生抑制こそが大事だと思うからだ。
ペットボトルの例からもわかるとおり、リサイクルだけでごみ問題は解決できない。ごみ全体ではリサイクル量もリサイクル率も増えてきたのに、ごみの処理量はさほど減っていないのだ。
いくらリサイクルを進めても肝心の排出量が減らないし、むしろリサイクルが使い捨て製品の「免罪符」になっているのではないか。持続可能な社会をつくるには、環境負荷の低減が絶対条件となる。
その意味では、ごみ問題も環境負荷の目で眺めなければいけない。ごみを減らそうとしてかえって環境負荷を増やしても意味はないのだ。
そうした視点でごみ問題とライフスタイルの関係を考えた。ごみを徹底的にリサイクルしたときと、発生抑制に主眼を置いて工夫したとき(エコライフ)で、環境負荷がどれほど減らせるかを比べてみた。
環境負荷の尺度としては、資源の消費量と温暖化の原因とされている二酸化炭素の排出量を使う。東京都練馬区に住む5人家族の家庭をモデルとし、一週間分のごみを対象にした。

ごみの総量は湿重量で2121s、容積で187.7Lであった、内訳は紙7.45s、プラスチック3.2s、生ごみ7.4s、ガラス121s、金属0.65s、繊維1.25に昭、皮・ゴム0.02s、その他0.05sである。まずはごみの資源消費量を計算しよう。
京都市のデータをもとに、含水率を紙15%、プラスチツク20%、生ごみ80%、ガラスー%、金属5%、繊維15%、皮・ゴム5%、その他15%(全体では37.3%)とみた。以上の数字を使えば、湿重量21.2sは、乾重量(資源消費量)13.3sに当たる。
こうした値から、製造エネルギーは24万2500キロカロリー、二酸化炭素の排出量に直すと19.4sになった。3.7倍すると二酸化炭素の重さになる。
このごみを焼却したら5.88sの二酸化炭素が出るため、製造と焼却の合計で25.3sの二酸化炭素負荷となる。さて、ごみをリサイクルすればどうなるか。
ごみのうちリサイクル対象になるのは、再生可能な紙、ペットボトル、空きびん、空き缶だ。まず資源の消費量は、リサイクルした分だけ減る。
かたや二酸化炭素の排出量は、リサイクルに伴うエネルギー消費も考えることになる。計算するときの考えかたにはいろいろある。

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